銀行

朝、ホストマザーのKatに車で
ダウンタ
ウンの都市銀行
(バンクオブアメリカ)に送って貰った。

彼女は、地方銀行の方
に行くと言って、
ダウンタウンでは、別行動だ
った。

私が銀行に来たのは、1,200ドルの
トラベラーズチェックをアメリカに
来て直ぐに銀行に預けたけど、逆に、
サービス料の支払いが、
発生してしまっていた為、
意図せずに付けてしまっていた
サービスを見直したいからだった。

銀行にお金を預けて、様々な
サービスの名目で請求を受ける事とは、
アメリカの銀行口座の種類を
ちゃんと理解出来ておらず、
残高が減った事に気が付いて、
慌ててサービス料が発生しない様に
契約を見直す事にしたのだった。


来年の夏に参加予定の
ヨーロッパ旅行の為には、
約400ドルが必
要なので、
その支払い分以外で、
見直した口座に預けた金額は、
775ドル18セント。

英語スキルが、まだまだ
上達出来ていないなりに、
何とか銀行での手続きを
済ませる事が出来た。
bank of America

それから、ハンドメイドビアスの販売で、
小銭が溜まっていた為、
1セント硬貨を50枚の束(棒金)に
出来る専用紙
(ペニーロール)
行員から貰っておいた


帰宅後、1セント硬貨を貰った
ペニーロールに入れたら、
3本の束が出来た。

もうあと、10セント分あれば、
もう1本のペニーロール

出来たのだけど……

・・・・・・・・・・・・
誘拐

夕方になって、ホストブラザーのJasと
ホストマザーのKatが、
映画について話をしていた。

後から振り返れば、その時、
彼らの会話に加わってしまった事が、
災難の始まりだった。


話の流れで、Jasとレンタルショップに
出掛ける事になり、
末っ子のホストシスターAshも
一緒に連れて行くことになった。

レンタルショップは、
ホームステイ先の家から
数百メートルほど丘にあがった所にある。

もうすぐ暗くなってしまう為、
私達は、急いだ。

目的の映画を
探している間、
Ashは、いつものように、
あれが欲しい、これが欲しい、
とグズりだした。

彼女は、お腹が減って、疲れたりすると、
いつも以上に輪をか
けて
グズつく子だった。

夕食は、まだとっていなかった
し、
丘を駆け上がって来た為、
空腹と疲労で、彼女が、
酷くグズつく条件が、
揃ってしまって
いたのだった。

キャンディーが欲しいと、
騒ぎはじめたので、
「ダメだよ」
と言っても、
何度も何度も、その
やりとりの繰り返しになった。
I wanna cnady !! (1)


ついには「いいもん!
マミーにお願いするから!」
と、Ashは、
外へ駆け出した。

もう、外は、暗くなっていた。
5歳の小さな子供を
独りにさせる訳には行かず、
彼女の後を追い掛けて
行った。

「放っておいてよ!
あんた
なんかキライ!」と、
ヒステリックに叫んで
駆けて行ってしまう

彼女を止めようと、抱きあげると、
足を蹴る、腕を引っ掻く、
手に
噛みつくの大暴れ。

背が低い私は、彼女を抱き上げても、
数十センチほど上に
持ち上げる程度だった。

なので、直ぐに、彼女は、
私の腕からすり抜けてしまう。

そんな追いかけっこを繰り返し、
ショッピングセンター
を走り回って、
端まで来て、
ようやく止まってくれた。

「ひとりで帰る!」と強がる
彼女だったけど、
暗くなった坂道を見て、
恐くなったらしかった。

一緒に来ていたJas
は、まだ、
レンタルショップにいるはずだか
ら、
ここで待っていても良いだろうと、
私は、Ashと
そのまま
ショッピングセンターの端で
Jasを待つ事にした。

そもそも私が、
彼女にお店に戻る様に
提案をしても言う事を聞かない……

しばらく待っていても、
Jasが来る事がなく、
痺れを切らした彼女

「私、Jasのところに行く!
」と
叫び駆け出して
レンタルシ
ヨップに戻った。

ところが、そこに、Jasはいなかった。

入れ違い
になった事に気が付いた私は、
彼女を連れて、家に帰ろうとしたけど、
また、彼女は、
キャンディー
欲しいと騒ぎはじめた。
Leave me alone! I hate you!!

大きな金切り声なので、
周りの人が振り返って見ていく。
そんな彼女を何とか持ちあげて
は彼女を運ぼうとした。

でも、彼女は、蹴るは、殴るは、
噛み付くは、引っ掻いて来るはで、
手が付けられない程の
大暴れな状態だった。

ショッピングセンターから出る所で
「ちょっと待ちなさい」
と、青いシャツを着た20代半ばの男性が、
車を
停めて、降りてきた。

「この子とどういう関係?」
と聞いてきた。
「ホストシスター」と答えると
彼は、”ホスト”の部分が聞き取れず
「シスター? そうは思えないけどね」

本当の姉妹な訳ないでしょ!
もし、実の妹だったら、
とっ
くに叱り飛ばして
姉として教育的指導を
しているワ!と心で答えたつつ
自分は、彼女の家にホームステイ
している留学生だと説明した。

「なんて名前
?」
と、彼はヒステリーを
起こしていたAshに聞いた。

それに素直に答える彼女ではない……
Leave me alone!の一点張り。

 次に、彼は、私に彼女の名前を
聞いてきたので、
「Ash」と、答
えた。

男性は、私が小さな子供を
誘拐しようとしていると疑って
質問して来ており、
不審人物として怪しまれている事が
目線や言葉使いから感じとれた。

「何才?」と、
Ashに問う男性。
私は「5才」と、また、
彼女の代わりに答えた。

「この子の両親の家へ僕も行こう。
本当か
確かめないと」
と、男性は言いだした。

いやちょっと待って、
見知らぬ男性の車に
乗るなんて、そんな事、
危なくて出来る訳ない!
彼と押し問答になった。

 らちが明かず「電話をする!」と、
私は答えた。

そんなやりとりをしていたら、
Ashは、また、
私の腕から
抜け出して、レンタルショップに
駆けて行った。
そして、それを追いかける私。
彼女はレンタルショップの
奥に逃げた。

私は、お店の人に
「電話を使わせてくれませんか?」
とホームステイ先に
電話をかけると、
先ほどまで、
一緒にいたはずのJasが出た。

ホストマザーのKatに
迎えに
来て欲しいと彼に頼むと、
彼女は来てくれないとJas
は言う。

彼は、今から
そちらに戻るから、
双方から歩いて、途中で会おうと
電話を切ってしまった

ため息をついて、
あらためて彼女を運ぼ
うとすると、
キャンディーの前から離れない。

レン
タルショップに、
充実したキャンディー棚を
置くんじ
ゃない! とお店に
心で突っ込みながら
彼女を運ぼう
と試みるけど、
腕力もなかった私は、
暴れる彼女を持ち上げる事が
出来なかった。

ショッピングセンターに
買い物に来ていた人達が、
お店の出入り口に集まってきて、
店内にいた客達も
遠巻きに私とAshを
見ていた。


さっきの男性は
「彼女は、留学生だそうだ」と、
私が説明した事を周りの人達に
話していた。

レンタルショップの店員の
おじさんが、見かねて
私から電話をしよう」と、
言ってくれて、
電話をかけてくれた。

ようやく、Katは、
おじさんの電話効果で来てくれた。

彼女を待っている間も、Ashは、
手足をジタバ
タさせ
大声を張り上げていてた。
脱げた靴を履かせようと
していた私の髪の毛を引っ張る。

Katと彼女の友人とJasの3人が
お店にやって来てくれた。

気が付くと、警察官2人が、
人垣
の中から出て来た。
Police officers (1)

Ashの癇癪の相手で必死だったけど、
どうやらショッピングセンター内では、
相当に目立った騒ぎだったら
しい。

ものすごく、自分が情けなかった。

16才の高校2年生が、
5才のチビッ子をなだめ諭して、
子供の癇癪を押さえることが、
出来ないなんて……

駆け付けて来た警察官たちは、
Katに事情徴収をしていた。

訝しむ大人達を説得する英語力が
無かったから、
数か月一緒に暮らした
ホストシスターと
良好な関係を構築
出来ていなかったから、
犯罪を起こしそうな
アジア人に見られたから、
歳相応の状況に応じた対応が
出来なかったから、
高校生にもなって、
親(ホストペアレント)を
呼び出されて
恥ずかしかったから、などなど、
色々な想いが、
ブワーッと押し寄せて、
自分の不甲斐なさで、
私は泣き出してしまった。


ホームステイ先に帰ってもAshは、
「キャンディー!」
「Aki
なんて、大きらい!」と叫んでいた。

・・・・・・・・・・・・
号泣


その夜は、私がアメリカに来て、
初めて泣いた。

嗚咽を押さえることが
出来ずに、
ベットに突っ伏して、
泣き止もうと深呼吸をし
た。

Katや彼女の友人や、
ホストファザーのBilが、
号泣している私を慰めてくれた。

「35才の幼稚園の先生でも、
手を焼く様な
Ashなのよ。
あなたのせいじゃないわ」と、
「45分間も、泣き続けるAshを、
どうにかして下さ
いと、
電話が来たことがあったわ。」

フォローして貰っても、
惨めで、居た堪れない気持ちは
納まらず、私は、
涙を止める事が
出来なくなっていた。

気晴らしにと、Bilが、
次女のLin
を迎えに行くというので、
それについて
行った。

迎えから帰って来ると、
末っ子Ashは、家に居な
かった。

帰宅後もずっと、癇癪で、
騒いでいたらしく、Katが、
どこ
かへ預けて来たらしい。

Katは、私が出掛けている間
に、
アイスクリームを買って来て
くれていて、Akiの為
にと夕食後に
出してくれたので、
泣きはらした目で、私は
アイスを食べた。


tears and ice cream




17歳のときに知りたかった受験のこと、人生のこと。
高田 ふーみん
ダイヤモンド社
2025-03-05